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災禍の後に種を成す。 々 羅 後語り 薬売りがほんの少し滞在を伸ばした最後の日。 ようやく葬儀も終わり、店も落ち着いて一日自由になったその日、吉日。私は薬売りとじっくり話をする機会を得た。 薬売りは今まで出遭ったいろいろなモノノ怪の話をしてくれたが、やはり御伽草子の中のことに思えて、 唯一実感できる煙々羅の出来事も年を経るにつれ、自分が御伽草子にしてしまいそうだと感じた。 「今回のことは忘れたくないですね」 「そうですか」 薬売りから笑みが零れる。 「薬売りさん、瀬戸のこと、本当にありがとうございました。それと興味深いお話も。お礼に私も一つ」 「ふむ、」 「日本とも異国とも違う処に一人の子供がおりました。子供は御伽草子に憧れ、自分が御伽草子の人物になることを願っておりました。 するとモノノ怪の仕業かはたまた神の仕業か、寝床にもぐりこんだまでは覚えているのに、目が覚めると見知らぬ土地におりました。 そこに通りかかったのはお店の旦那。奇特なお方も居たものです。子供は大事に育てられ、町で噂の娘となりました。出自が定かでない娘をある者は神の子と呼び、ある者はアヤカシと呼びました。さて、横に居るのは退魔の剣を持ちたる男。娘はその刃を受けるのでしょうか。 それを決めるのは薬売り、娘の運命はいかに……」 ぱち、ぱち、ぱちと手を打つ薬売り。 「ありきたりな御伽草子です」 「いえ、実に興味深い方だ」 「そう言って頂けたのは初めてです」 「旦那がお困りの虚言癖、一生治らないでしょう、ね」 ふわりと柔らかい風が吹いて髪を散らす。そのほんの僅かな間、私たちはお互いの瞳に姿を焼き付けた。目の前の相手は人生で一度出会うか出会わないかの忘れたくない人物。そう思ったのは私だけではない、はず。 「また、いつか」 「ええ、いつか」 薬売りは薄く微笑み、そのままどこぞへ旅立ってしまった。 その後、噂の娘は姿を消した。どこへ消えたのかは定かでない。 ただ、ごく稀に訪れる薬売りが一人増えたという。 |