その娘は白い花弁を咲き散らす花の様であった。娘の纏った雰囲気がその美しさを一層引き立てた。











二の幕






「またお医者様がおいでになったんですね……」
「店に出ていていいと言ったのに」
「いえ、私はお嬢様のお世話を言い付かっていますので、その」
「分かってるわ」
瀬戸は私がこの店に来た時には既に奉公をしていたけれど、同じ年頃の子供が居なかったから義親父様が遊び相手兼世話役にした。瀬戸自信、遠縁にしか身寄りがないので、一年をどこへ帰るともない、この店で過ごしてきた。私たちは姉妹のようなものだった。
「お客様、早くお帰りになるとよいですね。やはり女子同士の方が何かと話も弾みますし」
にこり、と笑う瀬戸は微風にも揺れる鈴蘭のようで可愛らしかった。
瀬戸―――良い娘だけれど私への依存心が強く、それが婿を貰うとき難にならないかが心配だった。
「ここでそんな話は止した方がいいよ」
「あ、はい。そうですね……」
ふ、と。視線を上げると向こうに下男が見えた。
「お疲れ様」
「有難うございやす」
ただそれだけだったのに、瀬戸は眉間に皺を作った。
「笑って挨拶は商いの基本でしょうに」
「でも、何だか私……嫌です」
「男嫌いじゃ、結婚相手が見つからないわよ」
「それはそうですけど、それだけじゃなくて……。さっきのはお嬢さまに気がある顔です!私にはそう見えました」
「瀬戸!」
私はギッと瀬戸を睨みつけた。その言葉はこの店では禁句になっているというのに!
「きっとすぐに死んでしまいます」
「その話はやめなさい」
幼い頃よりこうであったけど、瀬戸が可愛いのも本当。瀬戸が私の神経に障るのも本当だった。
「瀬戸、今日はもう休んだ方がいい。そんな気持ちじゃ店にでられないでしょ。私から義親父様と皆に伝えておくから」
影を背負ってのろのろと歩く瀬戸を見送った。
「あ、」
またか……今度は母屋に隣接した住み込み部屋の方から鼠色が登った。今日は量が多いのが気に掛かったが、あれは確かにいつもの煙で木が焼けた煙ではないので心配はいらない。そう思った。もし、火が出ていれば瀬戸が部屋に向かったばかりだ。叫び声が上がるだろう。それが聞こえないのを確認して賑やかな方へと歩みを進めた。



(10.7.25)