3年間着慣れた制服に袖を通すものこれが最後、そう思うと何の変哲もなかった制服にも特別な感情が沸いた。春と言えどまだ寒さ残る風が髪を靡かせる。見慣れたはずの学校までの道を今日は景色を確かめるように歩く。目の前に伸びた影が早く学校へ行こうと急かすようで私はそれを追うように足を速める。後ろからパタパタと足音がして自分を取り囲むように影が増えた。



「shit!そんなに急ぐなよ」
「時間は十分ある。急くこともない」
「そうだよ、俺らと一緒に行こーぜ」
政宗が制服をきちんと着ている姿なんて入学式以来だ。いつもシャツは出しっぱなし、ボタン開けっ放しだったから滑稽に見えて苦笑した。慶次もまつさんが用意したのだろう、シャツなんか糊まで利かせてまるで新品のそれだ。落ち着かなさそうに裾を摘んでそわそわしている。元就は元就で相も変わらず3年間貫き通した正統派のまま今日という日を迎えたのだ。車が通らないのをいいことに4人で広い道路を広がって歩く。いつもと変わらないたわいもないお喋りに変わらないメンバー、初めて会ったあの頃と変化がない。一つ違うところと言えば彼らの背が大きく、そして逞しくなったことだろうか。
「辛気臭ぇ顔してんなよ」
隣を歩く眼帯男も嫌味っぽく笑うけれどどこか優しさを帯びていて私は「ん、」と返すだけだった。校舎に続く道を黙って歩く。皆、それぞれに思うところがあるのだろう。もちろん私も何も言わない。丁度校門に入るところで慶次が足を止める。
「なあ、手繋いで最後の登校といこうぜ」
それを聞いていつもは乗り気でない元就が率先して私に手を差し出す。長い指に自分の指を絡めると4人とも暗黙の了解で手を握る。
「始めの第一歩!で校門を跨ぐ。分かった?」
「それって“だるまさんがころんだ”じゃねぇの」
呆れる政宗も笑っているので了解したと受け取って一同前を向く。ざわざわとまだ蕾の桜の木が靡く。余りにも強い風に頭がボサボサだ。隣の慶次がすーっと息を吸ったので身構えた。
「いくぜっ!せーの、はーじーめーのー第、一、歩!!」



走り幅跳びみたいに手を繋いでジャンプして、男の子たちに引っ張られるようにして初めて遠くに跳んだ。まさか自分がこんなに飛べるとは思わなくて校門を振り返り距離を確認してお腹を押さえて笑う。鞄を放りだしていると走って追いついて来たのだろう、荒い息をした元親が「落としもん」と拾ってくれる。肩を叩かれて指差す方を見れば春の柔らかな光に照らされて私の大切な親友たちが手を降っていた。



(ああ、私、もうここを離れても大丈夫な気がした)

KURIYA+より愛をこめてfree
(08.02.27)