Circulation of geniality








薬品のにおいが充満する空間。それなりに広い筈なのに、実験道具と書類の山の所為で、狭く感じる。
そんな場所で彼らは机に向かって、研究対象あるいは書物と日夜にらめっこをしている。





自分がここに来てから、どれ位経っただろう。 日常会話として流暢に英語を話すことはできないが、こうして馴染みの科学班を尋ねては、労うことはできるようになった。
それも、リナリーが誘ってくれたお陰だ。
「………、珍しい」
私は白磁のティーセットとコーヒーの入ったサーバーをお気に入りの花柄のトレーに乗せ、科学室にやってきた。今日は少しだけみんなと一服しようと思ったのだ。そんな期待を胸にノックをしたが返事はない。仕方なく扉を開けると、静まり返った部屋に全員分の寝息が響いていたという訳。
「リーバー班長?おはようございます」
自分の腕を枕に気持ち良さそうに眠っている。
「起きそうにないなぁ」
机にぐったりと体重をかけている様と濃いクマが、徹夜をものがたっていた。
「残念。………あ、これ何だろ」
リーバー班長の下敷きになっている書類の中に1枚だけ落書きのようなものを見つけた。
それは女性の絵で、少しというかほとんど絵心は無かったが、女性を色々な角度から精密に書かれていた。パンツ、スカート、ロングコート姿が描かれている。どうやら、団服のデザインを決めかねているらしい。
「あっ、これって私?」
よく見ると女性の絵の横に「」と記してあった。
(ありがとうございます)
いよいよ自分にも団服ができるのか。
「ふふ、」
ようやく自分も教団の一員になれる気がして笑みが零れた。
「楽しみにしてますね」





私は部屋の電気を落とし、食器を持って静かに部屋を出た。
目覚ましはかけていない。起せばいい時間は何度もここに来ているから大体分かる。
今宵は満月。優しい光につつまれて、みなさん、よい夢を。



(10.05.05)