もしかしたら彼の手の上で踊らされているのかもしれない






「あっ、ジンジャーエールきれてる……。しょうがない、ファンタでいいや」
汗ばむ季節の冷蔵庫は天国だ。幸村と共有している冷蔵庫は生活食品と夏物のお菓子や飲み物が空間を分け合っている。 食事する回数は同じでも、流石は食べ盛りの男の子。食欲が失せてしまうくらいに食品が並んでいた。
ボトルを入れるスペースには私の野菜ジュースと水、共有している水出し緑茶の他は幸村のものばかりで、こんなにあるんだから 今更1本飲んでも起こられる仲じゃないなと思ってキャップをひねった。
「あっちいな……クーラーつけたいんだけどなー」
携帯を開くとデジタル時計が4時を表示していた。部屋が過ごしやすくなる前に幸村が帰ってくるのが分かってリモコンに伸ばした手を引っ込める。
あまり部屋を涼しくしていると省エネにはまっている彼からお叱りを受ける。そのくせ、ショートパンツにキャミソールで出迎えると 肌を見せすぎだと起こられる。仕方ないので「選んでくれるならいいよ」と譲歩して幸村にTシャツを買ってもらった。
物より言葉を選ぶ幸村だから、誕生日とかここぞ、というときにはこっちが恥かしくなる言葉をくれるんだけど、やっぱり形のあるものが 欲しくてのささない反抗だったのだ。
それで今そのTシャツを着ているわけだけど、意外とセンスがいい。
「ただいまー!」
「ん、お帰りなさい」
「やっぱりだ、似合っている」
ほら、息をするみたいにこんなことを言う。それが恥かしくてちょっと嬉しくて、悟られないようにソファーに体育座りをした。
「それにしても暑いな」
チノパンにタンクトップに着替えてきた幸村が同じソファーに寝そべってくる。
すると筋肉質の腕が私の体をすくって、汗ばんだ体の上に降ろされた。胸の下の絶妙なところに腕を回されてくすぐったい。
ピ!と電子音が鳴る。
「嘘、省エネじゃなかったの?私、我慢して幸村が帰ってくるの待ってたんだけど」
「こうした方がが素直になってくれるゆえ、省エネは終わりだ」
背中が胸板に密着して背中いっぱいに幸村を感じる。
ほぅ……と恍惚のため息が耳元に届いた。
「気持ちいい……」
暑さに強い幸村が私を抱きかかえた状態で気持ちいいというのはどちらの意味か明白。
「幸村が着ろって言ったのに……っ、はぁっ」
「今はいい……」
Tシャツの裾からてのひらを滑らされて呆れ声とぞくりとした声が混ざってしまった。
それを了承と受け取ったのだろう。ショートパンツのボタンは外されTシャツはたくし上げられ、あっという真にあられもない姿になってしまった。
「まだ明るいのにっ……」
「ん、我慢できぬ……はぁっ、も嫌いではないだろう」
「目、つぶっててよね、ぅあっ、そこ、やだ!」
熱の塊を腰のあたりに感じながら逞しい体に体重を預けると幸村の顔が窺えた。
快感に眉を顰めた顔に体がどくりと脈を打つ。私はこの顔がたまらなくて。
「ぁっ……好きっ」
「素直だ」
「違う、そういう意味じゃなくて!」
あとは本能のままお互いの限界まで求め合った。



お腹が減って目が覚めると深夜だった。
「ゆきむらー……どこ?」
ソファーに姿がなくて視線を泳がす。
「こっちだ」
キッチンから声がした。
「あ、ごはん作ってくれてるんだ」
「あぁ、夕飯食べてないであろう?ちゃんと食べねば明日に響くぞ」
「そうさせたのは誰よ」
「俺だ。責任はとってるぞ?」
「もう……」
食欲をそそる匂いが運ばれてくる。カロリーを考えて作ってくれるから、おいしいしありがたい。私は幸村の料理が楽しみだった。
「俺はをもう一度食べたいな」
言われて自分を見ると、パンツにTシャツの2枚だけで幸村の好きそうな格好だった。
「気づいてるなら早く行ってよ、馬鹿!」
「ふふ、」
最近は幸村にアドバンテージがあるみたいでくやしい。再び私が優勢に立つために思考した。
「さぁ、殿はこちらへ」
でも幸村の鼻歌を後ろにまた季節はずれのゆたんぽになっている私には無理かもしれない。
「自分の馬鹿」


(10.07.16)