歌なんて言うのは気合と根性で歌うもんだ!



むっつりと黙ったまま不機嫌ですと顔に書いてある政宗を放って、私は浮かれた気分で歌本をめくっていく。 カラオケなんていつ振りだろうと考えて妙にテンションが上がっているのを感じる。正面に座った政宗は頼んだコーラをちびちび飲むだけだった。 目当ての曲が見つかって番号を送信する。マイクの電源を入れて音の出方を調節するとタイミングよく曲が再生された。 歌声にそれほど自信があるわけじゃないけれどそんなに下手ではないと思う。歌っている最中に政宗に視線を向けるとやはり不機嫌そうに画面を見つめていた。



「なに怒ってんの?」
「怒ってねぇ」
「嘘吐き。眉間にこーんな皺よせちゃって!」
「怒ってるんじゃねぇ、不機嫌なだけだ」
「何その屁理屈」
「よりにもよって何でカラオケなんだよ」
「元親からただ券もらったから」
「Jesus.元親の野郎」
「ねぇ、政宗も歌おうよ」
「誰が歌うか!」

「政宗」
「あ?」
「出ようか」
「What?」
「カラオケ、嫌なんだよね?ごめんね知らなくて」
「いや、嫌いっつーか……」
「五月蝿いの嫌いだもんね。出よう」
「Stop,stop!」
「なに?」
「歌が、その……」
「歌がなに?」
「下手なんだよ」
「……え?」
「だから!歌が下手なんだよオレは!」


「下手でもいいじゃん」
「よくねぇ」
「いいからほら、何歌う?」
「歌わねぇって言ってんだろ」
「勝手に入れちゃいまーす」
「あ、テメェ!」
「ほらほらマイク持って。一緒に歌おう」



強制的に握らせたマイクのスイッチを渋々オンにして政宗は流れてきた曲に合わせて口を開く。確かに上手とはお世辞にも言えない感じだったけれど 一緒に歌ったらそんなこと気にならなかったし、政宗も途中から不機嫌な顔はやめて諦めたような顔で最後まで歌ってくれた。 お店を出るときに「もう絶対いかねぇ」って言ってたけどね。