ミルフィーユと私




「ただいまー。特大プリンとミルフィーユ買ってきたよ」
「ん、お帰り」
靴をポイっと投げ捨てて部屋へ上がりこむ。もうここは我が城。居心地がよくて外に出るのが億劫になってしまうわ!
「麦茶でいいかー?」
「おっけー!氷も入れてね」
実を言うと慶次の家に居候させてもらっているのです。
お互い運命のサイコロが変な方向に転がってしまったみたいで、気ままにフリーター生活。決してニートじゃない!よね。
「次のシフトいつだっけ?」
「明日の17時から22時。おっ、ありがと」
冷たい麦茶と共にココアのミルフィーユが渡される。お皿に置いたミルフィーユに買い置きのバニラアイスを添えたりしちゃってるところが慶次らしい。
「可愛いだろ、これ」
どこからとりだしたのかクリスマスのケーキについてるような砂糖菓子を私のお皿に乗っける。
「バイト先で貰ったんだ。またが好きそうなのがあったら貰ってくるよ」
そう言ってリモコンに手を伸ばした。
慶次はこれが当たり前なのかな。バイト先の女の子にもいつもこんなこと言ってるんだろうか。
「慶次、バイト先でモテるでしょ」
「老若男女ね!」
「ふーん」
「そうだ、そっちの雑誌とってよ」
「どれ?」
「表紙が青いやつ」
「たくさんあるなー。えっと」
「あった!これこれ」
「うぇっ?!」
私の向こう側にある雑誌をとろうとした慶次がのっかってきてお互いの肌が触れ合った。なかなか目当ての雑誌に手が届かなくて私の上でもがくので自分でもあまり触れないところが刺激されてたまらない。
「んーっ、やだ、そこっ駄目ぇ」
「へっ?!」
私の声に驚いた慶次が体を起こす。自分の手が置かれている場所を認識して慶次もばつが悪そうな顔をした。
「んー、あのさ。俺もドキドキしてる」
眉根を下げて笑う慶次の下半身はしっかり主張していて今度は私が反応に困ってしまった。
次に触れられたら体を許してしまいそう。太い指が私の頬に近づいてくる。どうしよう、まだ、そんな勇気はない。
とたん、鞄から軽快な音が流れてきた。反射的に慶次が携帯に出る。はい、はいって丁寧な口調だからきっとバイト先からの電話なんだろう。
「行かなきゃ。でもその前に」
ちゅっと頬に吸い付かれた。
「俺が帰るまでに心の準備しな。が想ってくれてた分、しっかり返させてもらうから」
ああ、なんだ。私の気持ちはバレてたんだ。まだ頬に唇の感触が残っている。これだけで疼くのに夜になったら私はどうなってしまうんだろう。
不安と期待がごちゃ混ぜだけどそれはきっと思い出せなくなるくらいにしてくれるんだろうな、なんて思ってミルフィーユの続きを頬張った。
 


(09.08.30)