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埃っぽい天井裏。空気の循環が悪い空間に息を潜める。 口布が息で湿って些か不快だが呼吸をより密やかにするには便利である。皺の寄ったそれを軽く引き上げた僅かな動きで柱に張ったクモの巣が僅かに揺れた。 油断をすれば軋ませてしまいそうな足元。踵から着地して吸い付けるように体重を足先に移動させ、下から光の筋が射している隙間に近付く。瞼を閉じて意識を集中させれば人の気配がした。 ……気づかれている。 足元の板1枚の向こうから感じる気配は戦う人間の正にそれで、一度こちらに向けられれば突き刺さってしまいそうだ。 こちらから仕掛けるか、否か。 そう思案した一瞬に微動だにしていない筈の足元がミシ、と軋んだ。 「チッ……!」 途端に隙間から刃物の先端が覗く。反射的に体をのけぞらせた体が、着地場所を失って破壊された天井から落下していく。 薄い板を突いて骨組みに突き刺さったのは太く長い槍。それを認知した時には私の体は既に畳へと打ち付けられていた。 「痛っ……」 右肩の激痛で覚醒した。もしかしたら骨折しているのかもしれない。 畳が敷かれていたので落下して直ぐに目が覚めたのかと思ったが畳以外調度品もない息が苦しくなりそうな小部屋に転がされていることが分かり、ここが座敷牢だと見当をつける。 だんだんと冷静になるにつれて、後ろで結ばれた両手首も束ねられた足首も痛んできた。 「お目覚めかいlady」 艶やかな声に顔を上げれば、鮮やかな水玉の羽織を引っ掛けて斜に構えた伊達政宗がいた。 手元の細長い煙筒から筋が立ち上る。 「動くと体が悲鳴を上げるぜ?」 畳に転がっている私の襟首をつかんで間近に迫ってくる。 「Ha.奴がご執心てのはお前か」 私は答えないし、答えられない。口にあてられた猿轡がただ唾液で湿るだけ。 「お前は此処で暮らして貰うぜ。命の心配は無用だ。暫くはその格好が続くだろうがな」 斥眼に瞼が降り、すうっと開かれたと思うと藍色の瞳ががニヤリと笑って私の心に染みを残した。 (08.10.25) |