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ばたばたと階段を駆け下りる音がして着替えもそこそこな小十郎さんがキッチンに入ってくる。セットされてた髪は相当焦っていたのか後ろの方があらぬ方向に跳ねていて乱れたままだ。昨日徹夜してたからなあ。 「二度寝した」 こめかみを指でぐりぐり押さえつけて覚醒を促している彼に予め用意してあったブラックコーヒーを渡すと半分程飲んで息を吐いた。 「ご飯食べる時間ありますか。一応作ってあるんですけど」 「いや、出勤してから食べる」 申し訳なさそうにそう言ってぐしゃぐしゃと私の頭を撫でるとソファーに掛けっぱなしだったこげ茶のコートを引っ掛けて玄関に向かう。 ………………………………………………………………………………………… 「ちょ、待ってくださいっネクタイしてない」 革靴を穿く途中に呼び止められた。がネクタイを掴んで慌てて追いかけて来て手を伸ばす。玄関の段差が丁度いい感じに足りない身長差を埋めて、はこの間買一緒に出かけた時に買った鉄紺のネクタイを首に掛けテキパキと結んでいく。こんな場面は誰にも見せられないが1ヶ月も続けていればもう慣れたものだ。最後にぐぐっと根元を締めてにこりと新妻の笑顔。 ………………………………………………………………………………………… 「あなた。これ、他の女にやられたら別れますからね」 ネクタイが締められるのをじっと待っていた小十郎さんは「ネクタイ解けねぇじゃねぇか」と苦笑して渡した鞄を持って出て行った。見送る私の声に背を向けたまま空いた片手でひらひらと返事を返すのに満足して、彼の姿が完全に見えなくなった頃玄関を閉めた。 さて、旦那が帰るまでにピカピカに掃除をしてうんと美味しいご飯を作りましょう (08.01.12) |