「いいですか、ここ、このカメラ見てくださいね。カウントされるからいつ撮るか分かるのでそんなに構えなくても大丈夫ですよ」
「お、そうか」
「肩、肩の力抜いて」
私は証明写真ばりにカメラを睨みつける小十郎さんの肩を笑いをかみ殺しながらポンポン叩く。そんな私に彼は笑うなとばかりに逞しい腕を私の目に押し付けた。お、結構痛い。連続攻撃でぐりぐりとおでこに拳を当てられ少し赤くなった額をさすりながら機械をペンで操作する。
「設定は私がやっちゃっていいですか」
「おう、というかお前もうやってるだろ」
「あは」
テンポのいい音楽が流れ出す。写真にするのはどれがいいか聞いたら「俺にゃわからん。が選べ」とのお達しだったので「仰せのままにー」ときれいに写ったのを4枚選んだ。


「うわ、小十郎さんこんなに睨まなくてもいいじゃないですか。目が凄い怖いです。こんなの友達に見せたら引くかも」
「五月蝿ぇな、にやにやしてんじゃねぇよ」
「うぷ、すみません」
適当に謝りながら次々と落書きをしていく、はずなんだけどいつも友人に頼ってばかりの私がたくさんネタを思いつくわけは無くすぐにペンを走らせる手が止まってしまった。すると、機械が制限時間が近づいていることを知らせる。あと80秒か。
「時間ないから1枚書いてください」
そう言うと「どんなになっても知らねぇぞ」と渋々ペンを持ってくれた。顎に手を当てて真剣に考えている。10秒前のカウントが始まってぐしゃぐしゃと走り書きをしたみたい。カツカツカツとペンが画面を打つ音がした。


できたプリクラは私の功労賞な落書きで随分賑やかになっていた。気になっていた小十郎さんの書いたプリクラは探すまでも無く分かった。あの時間考えた結果がこれって喜んでいいの、かな。無理やり腕組みしてもらった写真に赤いハートが大きくぐるり。
「結構乙女チックですね」
ぴっと人差し指で写真を指して見せればプリクラをまるごと取られて「いらねぇんなら俺がもらう」と足早に自動ドアを出て行った。追いかけた私が彼の嬉しそうな表情を見たのは言わないでおいた。


赤いその、


その後、小十郎さんが自分の手帳に例のプリクラを貼っていたのを見つけてしまったのは私だけの秘密なのだ。

(07.12.08)