美しいものは籠に閉じ込めよう。



戦場で一人彷徨っていた姫を拾った。 親類縁者は皆死に、行く場所も頼るあてもない美しい姫君。 姫君は名前をという。
、ほら。今日はこんなもの貰ってきたよ」
「わぁっ綺麗!星を閉じ込めたみたい」
「それにあげるよ」
「本当?嬉しい」
星を閉じ込めたみたいな硝子の珠の付いた簪を日光にすかしてうっとりしている。
「簪貸してみな」
俺は受け取った簪を口にくわえての髪を結う。 さらさらさら 絹糸のような柔らかい髪。 俺の指をすり抜けて零れていく。 うなじの近くの髪を既にできた髪の束に入れようと首をなでるとは身震いをした。
「慶次様とおそろい」
結った姿を鏡で見せてやるとにこにこ嬉しそうに微笑む。 高い位置でまとめた髪はが身動きするたびに揺れる。



、いいものやるよ」
「なぁに?」
「何だと思う?」
「うーん、そうね…。櫛とか?」
「目つむってな」
「はい」
おとなしく言うことを聞くの顎をつかんで上を向かせる。 形のよい唇から声が漏れた。 その口を塞いでしまいたい衝動に駆られながら小さな朱塗りの器を開ける。 中身を少し指に付け、つつっと指をの唇に滑らせた。
「できた」
「紅…」
唇に指を当て、ふにふにと押すと紅が少し指に付いた。 どうやらお気に召したようで指についた紅をまじまじと見ている。
「その着物もずっと同じだ。飽きるだろ?これ着てみなよ」
のために京でも一番の大店に頼んで作らせたもの。 桜の淡い色がにはよく似合う。
「ほら、着替えよう。がこれを着た姿が見たい」
そう言うと頬を染めてうん、と小さく頷く。 かつては城で大事に大事に育てられていたのだろう。 世間知らずなこの姫は男に着替えさせられていることに抵抗がない。 着物を調えるふりをしてわき腹をなでるとくすぐったそうに身を捩った。
「うん。似合うよ。きれいだ」
「慶次さまありがとう。大切に着るね……」
は顔を曇らせて俯く。
「どうしたの?やっぱり気に入らなかった?ごめん、」
「違うの。父さまがくれたものと似ていたから…」
俺はの歪んだ顔は見たくないんだ。だから。と自分に言い訳をして優しくを抱きしめる。



美しいものは籠に入れよう。 外へ向かう扉は絶って俺だけしか見えないようにしてしまおう。 自然と口が三日月に歪むのが分かる。 この世間知らずな少女をうつくしいもので繋ぎとめて、 いつかは心も身体も奪うのだ。



籠の鳥



(07.08.16)