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部屋にはカタカタとキーが打たれる音と滝のように落ちる雨の音だけが聞こえる。 あと15分 10分 5分 「すみませーん、9時になりましたのでもう閉めまーす」 タイムアウトだ。 「あー、終わらなかったねー…」 「まさかあのように大量の課題が出るとは思わなかった…」 「続きは明日だね…」 「朝一の提出に間に合えばよいが…」 私と幸村は二人して風邪をひいてしまい先週の講義を休んだ。 そんなときに限って重量級の課題がでて私たちは運が悪い。 もっと悪いのは課題を私たちに伝えるのを頼まれた子が今日まで忘れていたということだ。 もし、できなくても私たちは悪くないのではないかと思いながら扉を開ける。 「きゃあっ!何これ!!」 「うおぉっ!!」 外は大雨というより嵐に近い。 少し開けた扉の隙間から強風をもろに受けてしまって時間をかけてセットしてきた髪は酷い有様だ。 真っ暗な視界の中をちぎれた葉やバケツが飛んでいるのが見える。 傘は持ってきているけれど、この横殴りの雨じゃあたぶん全く意味がないだろう。 駅にたどりつくまでにずぶ濡れはまぬがれない。 「あぁ…どうしよう…。走って帰るしかないかな」 「こうも雨風が酷くては…」 「傘、差しても濡れるよね」 「女子ひとりでは…」 「あー!電車止まったって!」 「その…」 「家に帰れないじゃないの…」 「あの…」 「嵐の馬鹿ー!」「殿っ!!!」 「えっ?」 携帯でこの地区の電車が全線停止というニュースを見て愕然としている私は幸村に話しかけられていたことに気付かなかった。 それより今日泊まるところを探さないと。 一面緑に囲まれたこの田舎じゃ一晩泊まれるところなんてない。 コンビ二はあることはあるけど、まさか朝までいるわけにはいかないし、第一私の体力が持たない。 友達にメールしてみようかな。一人暮らしの子なら大丈夫だよね? 「殿、今日はこんな嵐だ。その、電車もないなら某の家に泊まっていかれよ」 「えっ?!でも…」 「泊まるところがないのであろう?」 「う、ぅん…、あ〜う〜、いいの…?」 「も、問題、ない、で、ござる!」 幸村とは友達期間が長くて恋人になった今でもどちらかの家で会うとなるとお互い緊張してしまう。 幸村の家に行くなんて久しぶりだ。 まして泊まるなんて初めて。 彼が一人暮らしということを考えると意識しないなんてできない。 傘をさしても防げるような雨ではなくて、幸村宅に着いたころには服から雨が絞れるくらいになっていた。 雨を含んでじっとりとした服は気持ち悪い。 幸村が持ってきてくれたタオルでとりあえずの措置をしたけれど、濡れたままでは風邪をひくからとお風呂を薦めてくれた。 「ん〜…温かい」 シャワーから出るお湯は冷えた身体を暖めてくれてもう天国気分。 幸村が湯船まで作ってくれたから遠慮せずに入ってしまう。 あぁー、眠っちゃいそう。 幸村の家ってお金持ちなのかな? 学生は大抵アパートだけどここってマンションだよね。 バス・トイレだって別だし。 「殿、着替え置いておくでござるよ」 「うんーありがとう」 幸村が貸してくれたTシャツはブカブカで可愛くてもさすがに男の子。 それに、半パンも私が穿いたら七分丈に見えなくもない。 二人ともお風呂ですかっり温まって、課題やら嵐やらで疲労していた私たちは半分夢の中。 床はフローリングだけど、そんなこと気にならないくらい。 「わたし、もうねるね…」 「あぁ、ならベットを使うでござるよ」 「え、いいよ。だって幸村のだし」 「そうはいかん。女子を雑魚寝させるなど」 「いいよ、わたし、ねられるもん…」 「寝るならベットで寝るでござるよ」 「ゆきむらがねなよ…」 「いや、殿が!」 二人とも妙に頑固なところがわざわいして、どちらもベットで寝ればいいじゃないかという結論に至る。 ベットは私のよりふかふかで潜り込んだ瞬間に意識を手放した。 夜中、人の声で目が覚めた。 人の声というか息遣いだろうか。 もしかして泥棒?嫌な汗が垂れる。 怖くて目が開けられない。 意識を集中させると何だかうなされているような声だということに気付く。 どこからだろう?薄目を開けて辺りを見回すと暗闇の中に一緒に寝たはずの幸村が背を向けて床に座っていた。 「はっ、んんっ…くっ」 聞こえてくる声はうなされているものとは違ってしかし、妙に熱を含んだ声に聞き入ってしまう。 「ん、んんっ、殿、」 幸村の体が小刻みに震えていてこの暗い部屋の中でも頬が紅直しているのが分かった。 「あっ、あっ、あっ、」 もしかして、これって……。どうしよう!どうしよう!とりあえず耳、ふさご… 「あっ…、殿!あああっ!!」 お、遅かった……。 幸村は放心するように大の字に倒れこむ。しばらく放心していたが ふいにお互いの顔が見えてぱちり、と彼と目が合う。がばっと起き上がった幸村のズボンが下げられたままで直視できず布団で視界を隠す。 「殿!!い、いつから起きてっ!」 「ごめ、あのね、見るつもりはなかったの」 「申し訳ない!!、某殿でして、しまった!」 恥ずかしくて二人とも顔が熱い。 今更ながら一緒に寝たとか一緒のお風呂に入ったとか見てしまったとかぐるぐる頭を駆け巡って眩暈がする。 「その、殿があんまり艶かしいもので、我慢できなくなってしまったのだ。しかし、寝込みに手を出す訳には行かず……それに同意も無しになど……」 「ふぇ…」 「触れてはいない!断じて触れたりしてはいないぞ!!見ていただけだっ!」 「うー…」 「とても好い匂いがしてあのままだとて、手篭めにしてしまいそうだった故…」 「うわぁん!」 二人ともベットに正座して俯いている。顔は上げられない。 そのうち、幸村がちらりとこちらを見たかと思うと 「でも、殿は可愛かったでござる」 なんて言ってくれるから思い切って仕返しに口の端にキスをしてやった。 私たちが恋人らしくなるのはもうすぐかもしれない。 |
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(こんどはおとなの愛を) (07.08.05)