今日も教室はにぎやかだ。 その中心は決まって彼。 話上手で聞上手、恋の話もできるとあれば人気者は必死だ。 彼の周りには男女問わずいつも誰かいる。
「うん、やっぱりゆきちゃんはその髪型が似合うよ」
にこにこしながら女の子に話しかける彼に何だかやるせない気持になって教室を出る。 ふと彼と目が合った気がしたけど気のせいだろう。 今日からテスト期間なので部活もなくて、見慣れた道をとぼとぼ帰る。 未然・連用・終止…理解不能な呪文を呟く。 何か考えてないと、彼のことを思いだしてしまう。 それは苦しいのだ。



っ!」
突然大きな声で呼ばれてびっくりした私は鞄を落としてしまった。
「慶次…」
「よかった、やっぱだった」
「どうしたんの?」
「ん。一緒に帰ろうと思って」
慶次は私が落とした鞄を拾った。 鞄を受け取ろうとするとさり気なく反対側に持ち替えられて、代わりに暖かい手が重なる。 どうしたのかと思って慶次を見ると、そっぽを向いてしまって顔が見えない。 ちょっと残念だと思っていたらぐい、と手を引っ張られて私は引きずられる様に歩いた。
さ、なんで何にも言わないの」
「え、何を?」
「俺が女の子と話してること」
「………」
慶次はよく分からない。
急に私のことを忘れたみたいに離れてしまったり、そうかと思うとこうし近づいてきたり。
でも、手を繋いでいると心が暖かい。


曖昧な二人


(恋に疎いおんなのこと駆け引きできないおとこのこ)

(07.08.05)