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ばくばくと自分の心臓の脈を打つ音だけが聞こえる。もう息もまともに吸えなくて肺が時々思い出したように空気を吸い込む。脳が酸欠で頭が上手く働かない。ただ、目の前の光景が私の想定外のものであることは理解している。 「俺のこと、嫌いじゃないだろ」 私に覆いかぶさった体が触れるか触れないかの間隔を保ち続けていて動けない。慶次の茶色い瞳に動揺している自分が映る。息がかかる程私に体を近づけて視線を離すまいと真っ直ぐ見つめてくるから、目を逸らしてしまいたいのにそれができない。 「嫌いじゃないけど、するのは嫌。恐いの、できないよ………」 眉間に皺が寄って瞳が苦しそうに歪む。静かにゆっくり吐かれた息は熱かった。ベットについた手にグッと力が篭って慶次が勢いで私を手篭めにしないようにすごく我慢しているのが分かった。自分の熱をどうにか治めようと何度も息を吸って吐いてまるで風邪をひいた時みたいになってい る。そんな顔が見たくなくて、それなら慶次が苦しんでいる原因の私が離れた方がいいのではないかと慶次の下から体を引き抜くために腕に力を込める。 「わっ!」 「くっそ、」 半分まで体を起こしたところで腕を捕まれて元の位置に引き戻された。腕で支えていた体がいきなりバランスを崩されて慶次の胸に手をつくと余計に顔を歪めた。性急になるのを耐えようとシーツを握った太い腕がみし、と軋んだ。どうしよう、私は慶次を煽ってしまったみたい。 「慶次、苦しい」 また逃げると思ったのか大きな体が私の上に圧し掛かってきて私の体と慶次の体がぴたりとくっついた。くっついた体が本当に風邪を引いた時と同じに熱を持っていてこんなになるまで我慢してくれていたことに胸の奥が熱くなる。 「なぁ、もう我慢できない」 慶次は優しいから歯を食いしばってギリギリまで耐えて、私が「いいよ」、と言うのを待っているのだ。長いポニーテールが私に向かって元気なく垂れてまるで今の慶次の心境をあらわしているみたいだ。いつもにこにこ笑って元気な姿を知っているだけに自分がそうさせたことに罪悪感が沸いてしまう。 「慶次」 ぽた、と雫が落ちた。 茶色の瞳が潤って目尻に涙が溜まっている。 「もう駄目、しないとを離せないんだ。、お願い」 体重が更に私に重く圧し掛かってもう離すことができないと主張している。 「お願い、」 慶次の興奮が私に伝わって頭がぐらぐらする。本当は何とかしてあげたいと思う。でも慶次は体が人より大きいから、多分、その………アレも体格に比例しているだろう。普通でも痛いと聞くのに経験の無い私がいきなりそんなのを受け入れることは到底無理に思える。でも私は慶次のお願いに弱いのだ。頭がぐらぐらする。 「」 「………。手、手だけならいいよ」 決心して言った言葉はちゃんと伝わっただろうか。手で何をするってことは恥ずかしくて言えたものじゃない。反応を恐る恐る待っていると、慶次の瞳が大きく見開かれて揺れた。ぱちぱちと瞬きした後、にこぉっと溶けるような笑みをして唇が頬に触れた。 「………」 ごく、と自分の唾を飲み込む音だけが聞こえた。存在を主張しているそれが自分が想像していたものよりグロテスクで腰が引けてしまったのだ。時折ピクンと震えるそれになかなか触れることが出来ない。勇気が出なくてじっと見つめるしか出来ない。 「そうマジマジ見んなよ、恥ずかしいだろ」 未だに辛そうではあるけれど、へらっと笑った顔が私の知っているいつもの顔で、何だか触っても大丈夫な気がして手を伸ばした。 「っ、」 とたんに大きな肩が跳ねたから心配になる。 「ごめん、爪が当たった?痛かった?」 伸びた爪が触れたのだろうか。男のそこの感覚は分からないけれど、敏感なところと聞くから爪が当たっただけでも痛みを感じるのかもしれない。 「違うよ。気持ちいい。もっと触って」 困ったようなそれでいて懇願するような微笑をされて心臓がきゅうんとした。私はやっぱり慶次に弱い。私の指の動きに敏感に反応して慶次が息を零す。あの大きくて力では誰にも負けそうに無い慶次が私の指先一つで身を捩るのが可愛いと思ってしまう。 「すごい………。こんなにぬるぬるしてる」 「言うなよ………くっ、あぁ」 鈴口を指の腹で擦ると引き結んだ口からあぁ、と我慢して声帯を潰した声が漏れる。もっと声を上げさせたいと思う私は意地悪だろうか。私は自分の欲望に従って口に熱を含む。 「くっ!………、の口、熱い」 熱が口の中で体積を増していく。 慶次の手がベットを壊れそうな程に思い切り叩いてスプリングが軋む。舌を絡ます度に体を強張らせるのが男の人なのにすごく可愛い。ちゅぱちゅぱ吸っていると、口の中で熱がビクビク痙攣してきて限界なんだなっていうことが何となく分かった。でもまだ終わりにしたくなくて根っこを指でぎゅうと締めて出口に向かうものを止めてしまう。 「、何で……!いかせて、くれ、よ」 「駄目。もう少ししたい」 自分が触るのでこんなに気持ちよくなってくれることが嬉しくてあとほんの少しで上り詰めそうだった慶次を止めて行為を続ける。出したいのに出せないのってどんな感じなんだろう。目の前で体を捩って射精感を耐えている慶次の顔が朱に染まる。ちゅうちゅう鈴口を吸うのが一番感じるみたいで目尻からまた涙が滲んだ。 「慶次、顔、エロい」 「! 駄目だっ、口離せ!」 口に含んだままそういったのがいけなかったのかもしれない。叫んだのに驚いて条件反射で離したら勢いよく白濁が飛び散った。 はぁはぁ背を揺らして大きな体が傾く。私の胸に頭を埋めて男の人にしては長い睫毛を震わせている。 「気持ちよかった?私、上手にできた?」 「すげーよかった。俺、幸せだよ」 胸の中で本当に幸せそうに溶けそうな顔でふにゃりと笑うから私の方が幸せになってしまう。 「ねぇ。慶次、好き」 すりりと頬を寄せると慶次も寄せてきてぬくぬく暖かくて気持ちいい。後ろのポニーテールを梳いてあげるとふふ、と嬉しそうな声がする。そうしたら、手が両肩にかかって慶次も私の髪を梳いてくれるのかなと待っていたら、体が圧し掛かってきて、私はあっという間にベットに沈んだ。茶色の瞳が最初に見たのと同じギラついた獣になっている。 「なぁ、続きしないかい。今度は俺がを気持ちよくするから。絶対。約束する」 「手だけって最初に約束したでしょ」 「優しくする」 「え、AVとかじゃ駄目、かな」 「駄目。じゃないと気持ちよくならない。お願い」 慶次は私が自分のお願いに弱いのを知って言っている。 「………」 実を言うとさっきから下腹の奥がじゅくじゅく熱くて落ち着かないのだ。私、今とてもしたいのかもしれない。 「私、初めてだからどうしていいか分かんないよ」 経験らしい経験は何もないから、してもらっても答えることは出来ないのではないかという不安で一杯になる。そうしたら慶次は私に幻滅するかもしれない。それがとても恐い。 「いいよ。初めてを俺に頂戴」 でも、そんな不安を拭うように今までで一番優しい顔で愛しむように囁かれたから、耳も心も一瞬で熔かされてしまって服に手をかける慶次を止めることはもうできなかった。 (08.05.08) |