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冒険ができるのは高校生まで、と思って私は思い切って夢が丘高校を受験した。 小さな頃から夢見がちだった私は、物語のヒロインみたいな制服で学校に通えれば、本当に何か 自分をわくわくさせてくれることに出会えるんじゃないかと思ったから。 そして、私は無事合格して今に至る。 自分のクラスで二十数名のクラスメイトを見渡してみる。中でも私の目を引いたのはグリーンの髪をしたショートカットの子と 、黒髪が綺麗な都会的な雰囲気の子。話をしてみたいと思ったけど、私は彼女たちと席が離れていたし、しかも女の子のグループが垣根になっていたから空間を隔てている感じがしてあちらに行きにくかった。 「ふう」 もう直ぐ先生が来るし、あとから話しかけてみよう。女子という生き物はすぐ仲のいいグループができてしまって、一度そうなれば 新しく入っていくのが難しい。この学校には知り合いはいないし先が思いやられるなぁ。 「自分で決めた学校だから覚悟はしてたけど」 呟きは賑やかな声にかき消されて誰の耳にも届かなかったみたい。 「しまった……帰ってる」 ほんの少しトイレにいった間にあの二人はいなくなっていた。靴箱に行ってみたらやっぱり既に帰った後で、私は仕方なく校庭の角で持ってきたお弁当を食べた。 「自分で作ったお弁当を一人で食べるのって寂しい」 何でも一人でやるから!と親を説得して得た一人暮らしが急に心細くなってしまった。このまま友達ができなかったらどうしよう。家でも一人で学校でも一人なんて!3年間孤独じゃ悲しすぎる。結局昼ごはんの後、部活をいくつか回って帰途についた。 心地よい風が制服の長い裾を揺らす。綺麗な紫が波を立てた。 この町は坂が多い。数分歩くと学校が下に見えてくる。 「私の教室はあの辺かぁ……」 今日の自分は赤点だ。 「……でも、学校始まったばっかだし!明日があるよね!」 無理矢理自分を元気付けたそのとき、後ろから明るい声に呼び止められた。 「こーんにちはっ!」 「えっ?えっ?」 私に声を掛けたのは今日話しかけられなかった二人組だったのだ。嬉しい気持ちでいっぱいだったけど、 思いも寄らない声の主に私はちゃんと答えられなかった。 白黒している間にショートカットの子が近づいてきた。 「おんなじクラスの方!ですよね?」 少しかがんで私をのぞきこんで顔を確かめてるけど核心してる顔で。 「うっうん、そう、デス」 「やっぱり!」 肯定すると太陽みたいな明るさの笑顔になった。 「あの、後ろ姿が見えたからつい追いかけてきちゃったんです」 もう片方の子がすまなさそうに言った。 「あっ、ううん」 声を掛けてくれて嬉しいと言えればいいのに言えない口がもどかしい。 「実はですね、朝、あなたが私の前を歩いてらして、とっても気になってたんです!そしたらおんなじクラスでビックリしちゃって。帰りに声 かけようと思ったらいなくって。でも、帰り道に会えてラッキーでした!ねっ、てこ!」 「てこ?」 変わった名前だなぁ、心の中で呟いたつもりだったのについ口にだしてしまった。 「違うのよっ、これはね、小日向さんがつけてくれたあだ名でね」 「そうっ、てこ、おでこにある眉毛が薄いでしょ?だから点々を取って”てこ”って呼ぶことにしたの」 「そうなんだ。いい名前だね」 本当にそう思った。変わったあだ名だけど、つけた人の親しみが篭っているみたいで。この二人はいい友達になるんだろうな。 「あっ、ありがとう」 てこは頬を赤くして笑った。可愛いなぁ。 「それって素的だよね」 慌てているてこがみつけたそれ。 「これのこと?」 二人に見えるように自分の左手を上げて見せる。 「うん」 「あぁっ、それです!よくぎゅうって握り締めてたから、大切なものなのかなっと思って気になってたの!」 「これはね、そんな大したものじゃないよ?友達が海外に行ったお土産に買ってきてくれたチャームなの。ヴェネチアングラスって言うんだって。それをバングルにしたの。透明な十字架の中にデイジーの模様が入ってるでしょ。好きなの、デイジー。それでいつも着けてたら、いつの間にか緊張した時のお守りになっちゃって。握ると落ち着けるっていうか」 恥かしくて早口で喋り切って二人に視線を戻すと、キラキラ目を輝かせてた。 「凄い……っ!お友達の気持ちとあなたの気持ちがたくさん込められてるんだ……!それにヴェネチア!水の都! 憧れだぁっ。ねぇ、でじ!でじって読んでいい?」 すごくキラキラした目で私を見るから戸惑ってしまう。 「でじ?」 「デイジーの”で”と”じ”を取ってでじ!」 「!」 その時の私の顔は誰にでも分かるくらいの表情だっただろう。 「えぇっと、私は大木双葉。よろしくね」 「私はぴかり。小日向光ね」 「ぴかりにてこ……。私は……よろしくっ」 二人がまた明日!と言ってくれて胸がいっぱいになった。一番星に向かって走るとあっという間に家に着いて、汗だく のまま、ベットに倒れこんだ。また明日!たった一言がこんなに心躍るなんて!てこ、ぴかり、でじ。 明日あだ名で呼び合うのを想像して私は瞼を下ろした。 |